まるで「猫の事務所」

当記事のキーワードは「猫の事務所」。「猫の事務所」は宮沢賢治が著した話のひとつです。

なぜこの言葉をサイト名に入れたのか、この言葉と高瀬露さんがどう関係あるのかなどを綴っていきたいと思います。

「猫の事務所」のネタバレがありますので、当作の内容をご存知でない方は一読されることをおすすめします。

宮沢賢治 猫の事務所 ……ある小さな官衙に関する幻想……

サイト名に「猫の事務所」を入れた理由

露さんが「悪女」扱いされていることに疑問を抱き、ウェブサイトという形で小さいながらも声を上げようと思い立ったのが2004年のこと。資料集めやサイトの構成は着々と進んでいましたが、いつまでも迷っていたのが「タイトル」でした。

作業中は露さんが詠んだ賢治を偲ぶ短歌「ポラーノの広場に咲けるつめくさを早池の峯に吾は求めむ」にちなんで「つめくさ」という言葉を入れたタイトルを作り、それを仮として掲げていましたが、我ながら印象が薄いと感じました。gooブログ版の更新が終了する頃には完全に忘れてしまっていましたので、よほどのことだったと思います。

いくら「小さいながら」という気持ちでもタイトルにある程度の印象がなければ意味がありません。でもこれといったタイトルはなかなか思い浮かばず…。「サイトの公開をあまり先延ばしにするわけにもいかないし、仕方がないからこの仮タイトルをそのまま正式に使おうか」と妥協する気持ちが出てきた頃、何気なく読んだのが賢治の「猫の事務所」でした。

私は、この話の主人公「かま猫(釜猫)」と露さんに共通点があると考えました。それは「知らないところでいわれのない悪評を立てられた」ということです。

かま猫はそれが原因で、唯一の味方であった黒猫からも無視され仕事も干されるという苛烈なモラハラを受けることになりましたが、疑問や抗議の声を投げることもなくただ黙って立ちすくみ、涙をこぼしていました。

露さんもいつの間にか立てられどんどん広がっていく悪評に対し「事実でないことが語り継がれている」と言ったのみ。その他は一切の反論も弁解もしませんでした。

「かま猫と露さんは置かれた立場が似ている」と気づいた瞬間「これだ」と思い、そこから「「猫の事務所」調査書」というタイトルを作ったのです。

今も続く「猫の事務所」〜Wikipediaにて〜

gooブログ版の更新は2008年11月に終了しました。それ以降は発信はしなくなりましたが「露さんの名誉が一刻も早く回復されること」を願いながらブログの管理を続けていました。

月日は流れ、2018年のある日のこと。
暇つぶしでWikipediaを巡っていた際に驚くべきものを見つけたのです。
それは「高瀬露」のページ。

tsumekusa
tsumekusa

…( ゚д゚)
何これ。なんで露さんのページが作られてるの!?

嫌な予感しかしないと思う一方で「伝えられている話には疑問点もある」等の記述もあるかもと僅かな期待も抱きながらページを読んでみると、嫌な予感が大当たりでした。つまり、これまで伝えられている「悪評」をそのまま書き並べているのです。

履歴によるとこのページは2013年に作られたとのこと。どういうつもりでこんなページを作ったのか…と憤りを抱きながら「ノート」を見てみましたが、私の疑問を解消する投稿はありませんでした。

「一般人である彼女のページを作る必要があるのか」とページの存在に疑問を呈する投稿があったものの、結局「研究書等に名前が挙がっているのだから一般人とは言い切れないだろう」などと強引な形でページ存続が決定されたようです。

Wikipediaは論文等の資料には使えないものの、検索結果の上位に表示される・簡単に閲覧できるという性質上、どうしても影響力が高くなってしまいます。ページ編集者たちはそれを承知で露さんのページを作ったとしか思えません。

露さんを悪者にしたがる「賢治研究界の”猫の事務所”」はまだ続いており「高瀬露=悪女」というイメージを更に浸透・固定させることに必死になっているのだということに気付き、その姿勢に愕然とさせられました。

この件によって「少しの間声を上げただけでは何の意味もない、疑問や意見は繰り返し長く発信し続けなければならないんだ」と気づき「再び発信を始めなくてはいけない」と決意し、色々なやり方を試した結果「gooブログ版の再スタート」という形で当サイトを発表するに至ったのです。

Wikipedia「高瀬露」ページに対する個人的な考え

Wikipediaの「高瀬露」のページには露さんの写真が掲載されています1が、この画像は他サイトからの無断転載(引用元を記載していない)だったとのことです。

このページは、公平さに欠けた記述をするだけでなく資料の扱い方も杜撰な編集者(自称賢治研究家)たちが作り上げたもの。
資料としての価値はおろか読む価値さえ全くもって皆無だと考えています。
(故に、当記事から当該ページへのリンクは貼っておりません。ご了承ください)

ただ、このページには先述した通りの反省を促して下さり、当サイト発表に至るきっかけを頂きました。そしてこのページのノートを通じて「露さんに着せられた濡れ衣を綿密に調査・研究されているブログの存在」を知れたという嬉しいこともありましたので、この2点については感謝の意を表したいと思います。

「獅子」は現れないだろうけど

「猫の事務所」でかま猫を陥れた同僚猫たち・片方の言い分だけを信じかま猫を冷遇し始めた黒猫は、獅子の叱責を受け仕事も地位も取り上げられるという報いを受けます。

しかし、露さんの悪評を書き立てそれを流布した人々には(表面上は)何の報いも受けませんでした。現在も露さんの悪評を何の調査もせず裏付けも取らずに書き散らす・そういった行為を黙認する「賢治研究界の”猫の事務所”」の前にも「獅子」は現れないのかもしれません。

ただ、私は彼らが何か報いを受けることを願ってはいないし、彼らの改心を一切期待してはおりません。当サイトの文章も彼らに向けているものではありません。

当サイトは「賢治にまつわる雑学を薄く知っている・ある程度知っている」方々や将来賢治研究に携わりたいと考えているお若い方々に向けて、「ちょっと考えてみてほしい」という気持ちで意見や感想を述べています。2

これからもそれを目的として、ウェブの片隅に意見や感想を置き続けるつもりです。

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  1. 筆者は初見以降当該ページの閲覧を忌避しているため、現在も写真が掲載されているかは分かりません ↩︎
  2. 正直に言うと「露さんの悪評はデマ」という認識が広まっていくことに淡い期待を抱いてはおります ↩︎
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