「「悪評」との出会いから違和感を抱くまで」の続きです。
何気なく手に取った一冊の書籍で実情を知ったあとのこと、そして現状に思うことを述べていきます。
私たちは一人の女性に残酷なことをしていた
高瀬露という女性が問題ある人物であると信じつつも心の片隅で違和感を抱いていた2003(平成15)年のある日、書店で何気なく手に取り購入した「図説 宮沢賢治」(河出書房新社)。
この本の92ページから94ページに掲載されている上田哲(うえだあきら)さんのコラム「賢治をめぐる女性たちーー高瀬露を中心に」に以下のような記述があります。
「高瀬露について流布している話は、かなり歪められて伝えられている」
「これ(引用者注:賢治と露さんのエピソード)を書いた人びとはライスカレー事件の現場を見たことも、灰を塗った賢治の顔を見たことも、 賢治が自分は(ある感染症1)だと高瀬に語っているのを聞いたこともない」
一読した際、驚きと共に「やっぱりか!?」という思いを抱いたことをよく覚えています。
そして、次の記述に「返す言葉もない」とうなだれるしかなかったのもよく覚えています。
「不思議なことに、多くの人は、これらの話をなんらの検証もせず、 高瀬側の言い分は聞かず一方的な情報のみを受け入れ、いわば欠席裁判的に彼女を断罪している」
この話を知っている賢治ファン・賢治研究家の大多数はずっと露さんに残酷なことをしてきたのです。
もちろん、私もその一人でした。深く反省しております。
そして憤りを抱き(自分の浅薄さは棚上げ)サイト開設へ
そして間もなく、露さんの悪評を広めた人々に憤りを抱き始めました。
その憤りはgooブログ版「「猫の事務所」調査書」を作るきっかけとなったのです。
翌2004(平成16)年は可能な限り資料を集めて読み、サイトの構想を練るという1年でした。
2005(平成17)年5月にサイト(ブログ)始動の運びとなったわけですが、最初の記事にこのような文章を載せました。
それまで伝えられて来た高瀬露の行動はみな裏付けのない一方的な情報で高瀬露側の言い分は何一つ取り入れず、また何の検証もされていないものであると知り、私は憤りを覚えました。
今でも憤りを抱いています。それが過ぎて気分が悪くなります。
恐怖すら覚えます。そして、悲しいです。
私と同じように、いやそれ以上に宮沢賢治という人に惹かれ彼の童話や詩を好きなはずの研究者や愛好家たちが、一方的な情報で決めつけて一人の女性に「悪女」のレッテルを貼り、そしてその悪評をきちんと調査もせず検証もせず、それをさらに広めてゆき長年にわたりその女性を傷付け続けてきたことが。
そのようなことに無感覚でいて、知らぬ顔を続けていることが。
かつて自分も「一方的な情報で決めつけて一人の女性に「悪女」のレッテルを貼り、そしてその悪評をきちんと調査もせず検証もせず」「その女性を傷付け続けてきたこと」に「無感覚」だった一人であることを明かさず、なおかつそれを棚上げし、ご覧の通り「正義の立場にある自分」に陶酔しております。
「自分は残酷な賢治研究家たちに騙されていた」なんていう被害者意識があったのだと思います。
この浅薄さは本当にお恥ずかしい限り。この点も深く反省しております。
サイト開設の効果は…
「何か少しでもきっかけを与えられれば」と思って始めたブログの実質的な運営期間は約3年、その後は約15年ほど新規投稿はせず半放置状態でした。
運営中は励ましのコメントや参考になるコメントを頂き、半放置状態になっても私のブログがきっかけとなったと仰る、より深い研究・考察をされるブログに出会ったりと、私個人の範囲では「ブログを始めて良かった」と思えました。
しかし、賢治研究の範囲では大した効果が出せなかった…どころか、悪化に傾いているのではないかと感じています。
いまだに高瀬露さんの悪評をきちんと調査・検証をせずしれっと書き散らす「作家研究もどき」な本が出続けていること、ほぼ一般人である露さんのWikipedia項目を作り悪評のみを書き散らしている自称賢治愛好家が存在していることなどがその理由です。
(Wikipedia項目に関してはまた後日意見などを述べていきたいと思います)
2023年初めには「文豪たちのヤバい一面」みたいなセンセーショナルなタイトルを冠したコタツ記事もとい雑学文庫本に関連の記述(露さんの名前は出ていないながら)があったのを確認しています。
(売り上げに貢献したくないので書名等は出しません)
現状に思うこと2023
gooブログ版「「猫の事務所」調査書」の最初の記事はこの言葉で締めました。
賢治研究家の先生方には高瀬露の伝説について正しい検証を行い、間違いがあればそれを認め正すというきちんとした対応を望んでいます。
WEBの片隅でひっそり喋っているような私のブログをどれだけの賢治研究家が見て下さるかは分からないけど、もしご覧になったらきっと良識を持って応じてくださるだろう。
おめでたいと言われれば返す言葉がありませんが、私と同じ「賢治という人物に惹かれ、彼の童話や詩を愛する」人々を信じたかったのです。
しかし…
gooブログ版の更新を終了してから15年の間、前項でも述べたように状況は改善するどころか悪化に傾いているように感じられ、また宮沢賢治研究界というのは「2023年8月から9月にかけて大騒動になり社名変更にまで至った某芸能事務所」並みに「闇が深い」らしいことを知らされました。
ですので、現在「賢治研究家の先生方」の大多数にお伝えしたい言葉は「当ブログを見流してくださっても全く構いません」
当ブログを通じて作家研究などの活動をしない愛好家の方々にこの問題が静かに広がり、浸透していくことを願っています。
- センシティブワードと思われるので伏せました。病名は以下のリンクを参照してください。https://www.nippon-foundation.or.jp/what/projects/leprosy/about ↩︎