「中傷行為」伝説について考える(9)

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まとめ?と個人的意見・2

理解できないのは、こんなひどい噂を花巻どころか全国区まで広められたというのに、高瀬露は「事実でない事が語り継がれている」と言っただけで何の弁明もしなかったことです。
賢治でさえ、最初は黙っていてもとうとう関登久也氏に了解を求めに行ったくらいです。どんなに度量のある人でも、身に覚えのないことを言われれば弁明の一つもしたくなるのが普通です。

それについて上田哲氏は「これは彼女がキリスト者であったことによるのかもしれない。肉体的苦痛はもちろん、貧窮、迫害、誹謗などを自分の十字架としてにない、キリストの十字架の御苦に合わせ献げるため甘受するといった考え方が昔の信者にはあった。また、どうしてこのようなうわさを流布されるようになったかを話せば傷つく人のあることも考えていたようである。」と述べています()。

それと共に「意見が違っても逆らわない方だった」という評判もあります()。自分の名誉を守るために、宮沢家や関登久也氏、森荘已池氏、儀府成一氏らと場合によっては泥沼化も考えられるような争いをすることは望まなかったのでしょう。

そういう高瀬露の意向に私が口を挟む権利はありませんが、私自身は、それでも「ないものはない」と主張してほしかったと思っています。ただ賢治のもとに学びに行き、賢治にかすかな恋慕の感情を抱いたかも知れないというだけでそこまで貶められる筋合いはないのですから。

推測と憶測のみでこのようなことを書き、広めた関氏、森氏、儀府氏、そしてそれを鵜呑みに信じ続け半世紀に渡って広め続けている数々の賢治研究家たちのその行いこそ高瀬露を中傷する行為であり、本当なら彼ら(高瀬露の中傷行為を否定していたとはいえ、高橋慶吾氏もその一人であることは言うまでもありません)を責めてもいい立場であるはずの高瀬露が多くを語らないことで彼らを庇っているかたちになっているのです。

すでに鬼籍に入られている関氏、森氏はともかく儀府氏(失礼ながら、まだご存命なのでしょうか?)、そして今もなおこの話を鵜呑みにしている賢治研究家たちは高瀬露の懐の深さに救われているということを忘れないでほしいと思います。


頂いたコメント・管理人の返信
Unknown(ポラン) 2008年7月30日

tsumekusaさん、ほんとうにありがとうございます。

>自分の名誉を守るために、宮沢家や関登久也氏、森荘已池氏、儀府成一氏らと
場合によっては泥沼化も考えられるような争いをすることは望まなかった・・・
露さんが多くを語らなかった理由はこれに尽きるのでしょう。それによって傷つく人が他にあるとしたらなおさらです。理解してくれる人はきっといるという望みを抱いて、露さんはひとり耐えてこられたのですね。
私たちが置き忘れてきた小さな疑問=本当は大切な大きな問題だった=を掬い上げて、丁寧に調べ上げ、検証し、指摘して下さったtsumekusaさんに、心からお礼を申し上げたいです。

露さんだけでなく、賢治さんも、どんなによろこばれていることでしょうか。
賢治さんは決して、罪のない人が後ろ指を指されていることに平気でいられる人ではなかったと思いますから。
Unknown(tsumekusa) 2008年8月3日

ポランさん、コメントありがとうございます。
大変もったいないお言葉を頂きまして
とても嬉しく思っております。

>理解してくれる人はきっといるという望みを抱いて……

それと共に自分を慕ってくれる周りの人々の存在も
露さんの心の支えになっていたのではないかと思いますが、
それでも身に覚えのない悪い話を流され続けるのは
大変辛いものです。
露さんは本当に、本文にも書いたような懐の深い人、
そして精神力の強い人だったんだろうなと思います。
Unknown(harle) 2008年8月28日

宮沢賢治を調べていて偶然ここにたどり着きました(Wikipediaから)。
やっと全記事読み終わったところです。
この記事を書いてくれたことに感謝します。

露さんのこの噂に対する対応を読むと、露さんの人柄が分かる気がします。
事実に反するのに(名指しで)反論しないのは、懐の深さ(信仰の深さ?)を感じます。
ついついつまらないことに反論してしまう自分が情けない・・・。

露さんへの中傷は、「思い込み」が一人歩きした様にも思えますね。残念ながら思い込みを見てきたかの様に語る人はいっぱいいますし。思い込みで自分自信の記憶を書き換えてしまっている方もよく見ます。中には確信犯で作り話をしている方もいらっしゃいますが…。
ここ数年では「騒音おばさん」がでっち上げだったことで、自分の目で確認していないことを鵜呑みにすることの怖さを実感していますし・・・。

そんな中、いろんな資料を使いながらの検証、改めて感謝します。
Unknown(tsumekusa) 2008年9月4日

harleさん、初めまして。
当ブログをお読み頂きありがとうございました。
レスが遅くなりまして大変申し訳ございません。


>ついついつまらないことに反論してしまう

これはごく当たり前の反応なんですよね。
それを考えると、露さんの懐の深さ、
またharleさんの仰る「信仰の深さ」を
改めて感じてしまいますね。


>露さんへの中傷は……

後日アップしていくカテゴリでこれを
色々と考えてみたいと思っています。
時間はかかると思いますが、またお読み頂ければと思います。

「騒音おばさん」の件は恥ずかしながら知りませんでした。
調べてみようと思っています。

コメントありがとうございました。
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