
上田哲氏の論文「「宮澤賢治論」の再検証(二)―<悪女>にされた高瀬露―」に於いてのライスカレー事件の有無についての考察は、残念ながら未完のままになってしまいました。
ライスカレー事件の最後の考察になる今回のエントリでは私の推測や憶測が多分に入っていることをお断りした上で、私なりの「ライスカレー事件はあったのか?」を記していこうと思います。
いきなり結論から述べてしまいますが、「ライスカレー事件」という、今日まで伝えられている出来事自体はやはり、「高橋慶吾作・森荘已池、儀府成一補作」の完全なフィクションだと思います。
ただ、そのベースとなる出来事はあったのかも知れません。
それに関連しそうな賢治のエピソードに、「農民からのお礼は絶対に受け取らなかったし、食事の誘いも断っていた。」というものがあります。
賢治と高瀬露の間にも多分そういう、それも取り立てて大騒ぎするほどではないレベルのやりとりがあり、その現場に高橋慶吾氏が居合わせていた、それだけのことだったのではないかと思います。
(賢治に断られ、「オルガンをブーブー鳴らし」たくなる程の失望を感じたとしても、常識的な人間であれば無関係な人々の前でそのようなみっともない真似はしないでしょう。「自分を律するのに厳しい人」だった高瀬露ならなおさらです。)
高橋慶吾氏は、何故そんな話を作ってまで高瀬露を貶めようとしたのでしょうか。この疑問を後日考えていきたいと思います。